尚冨の立川三昧

第10回 米国での立川流彫刻−その3

 この美術展は、先に述べましたとおりラスベガス美術館とアジア文化交流協会(アジアの10カ国くらいで組織する美術家の団体)の二つの主催によって開かれました。6月に表彰式が行われ、そのレセプションに出席するため立川流の仲間と共に初めてラスベガス美術館を訪れました。ここで私の作品が「入選」だけでなく「ラスベガス美術館賞」という特別賞まで受賞したことを初めて知らされ、驚きの中で表彰をしていただきました。

 もう一つ、驚いたことといえばラスベガスの町です。今まで私が抱いていた町のイメージが一新しました。ラスベガスは二つの顔を持っていました。ギャンブルの町であるネオン溢れる地区から車で30分くらい、そこはまさに文教地区といった住宅街でした。その中に美術館がありました。来館される方も品格があり立派な方ばかりでした。

 この美術展は非常にユニークなもので、そのレセプションの中で各作品の近くにそれぞれ作家が立ち、お客様に対して説明をしたり質問に答えたりするという形をとっておりました。このラスベガス展は今回が二回目の開催ということもあり、市民のみなさんはよく認知していたようで大変人気がありました。レセプションの参加費がかなり高額であるにもかかわらず、500名以上の方にかけつけていただけました。

 今まで、海外の人たちの生の声を聞く機会はほとんどなかったのですが、アメリカにいた私の娘が通訳となり、現地の方々の印象を直接耳にする事ができました。初めて見る彫刻だという声が多かったと思います。「欅の木目」という素材を生かした彫刻の仕方については、日本人以上に注目していたと思います。
 やはり見に来る方も美術愛好家であって、ある程度美術を専門的に知っているという方がほとんどなのです。そういう人たちが私の彫刻をじっと眺めて、「木目が美しい」「ラインが美しい」と言ってくださいました。木という素材の要素をもって、線描である日本画を彫刻で表しているわけですから、そうした印象を持っていただいたことに感激しました。やはり見る力のある方が多いのだという印象を持ちました。
 ラスベガス美術館での展覧会は5月から7月まで、約二ヶ月間にわたって開かれ、様々な評価を得ることができました。立川流としては初めてのアメリカでの展覧会でした。もうひとつ言うならば、立川流の「美術界への正式な進出」といってもよいかもしれません。これが、平成13年度にラスベガスで行われた「Asian Art Now 2001」という展覧会でした。
写真  左上:ラスベガス美術館館長(当時)と  右下:現地の美術愛好家から熱心な質問が
【 戻る 】 【 次へ 】